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2021.06.30

受診案内

新型コロナウィルスに対する、 妊娠を希望する女性と妊娠中の女性へのワクチン接種について

妊娠を希望する女性に対するワクチンの接種は、アメリカやヨーロッパあるいはオーストラリア等の諸外国に加えて、わが国においても積極的な実施が勧奨されています。

ワクチン接種後に妊娠を延期する必要があるかどうかについては、さまざまな見解があります。アメリカ生殖医学会は、ワクチンは生ウイルスではないので、ワクチン投与のために妊娠を試みることを遅らせたり、2回目の投与が行われるまで治療を延期したりする理由はないとしています(2021年5月20日付け)。
https://www.asrm.org/globalassets/asrm/asrm-content/news-and-publications/covid-19/covidtaskforceupdate13.pdf

一方、ヨーロッパ生殖医学会では、体外受精 (精子採取・卵巣刺激・胚移植)の開始・再開は、免疫反応が落ち着くまで、すなわち2回目のワクチン接種終了後の数日間は延期するのが賢明であると記しております (2021年6月8日付け)。
https://www.eshre.eu/Europe/Position-statements/COVID19

妊娠中の女性に対するワクチンの接種は、欧米では妊娠の時期に依らずその実施が推奨されています。New England Journal of Medicine (NEJM)誌に4月に、妊娠中のワクチン接種の安全性に関する報告が掲載されたことを背景としています。この文献では、2020年12月14日~2021年2月28日の期間にワクチンを接種した3958人の妊娠女性を対象としています。その中で報告された流産率は13%程度であり、一般人口との差がほぼないことや、新生児死亡がゼロであったということが報告されております。報告の時点で出産まで至った妊娠女性のデータが中心ですので、研究協力者の、その3分の2が妊娠後半期に接種しています。

一方わが国では、日本産科婦人科学会・日本産科婦人科感染症学会による5月12日付の勧奨により、妊娠中のワクチン接種については妊娠12週以降での実施が推奨されると言う文言が付されました。これは妊娠初期のワクチン接種による赤ちゃんの先天奇形のリスクの上昇の可能性が不明であることによる混乱を避けることを目的としております。ただし、妊娠12週以降まで接種を遅らせることを推奨するだけの科学的な根拠はありません。諸外国の動向に追従するように、6月17日付けの同学会の声明では、ワクチン接種を12週以降に実施すべきと定める文言は削除されて、妊娠初期の接種も可能としております。先述のNEJM論文では、妊娠初期にワクチンを接種した女性の事例が必ずしも多くないため、例えばワクチン接種により初期流産のリスクが上昇するか否か?等の議論には、 今後もさらに大きな規模での検証が必要と思われます。これらを踏まえて、最終的にはご自身で実施を決定しなければなりません。かかりつけの医師とも良く相談してみて下さい。

妊娠中に発熱した状態のまま、数日を過ごすことには問題があるかも知れません。
ワクチンの接種を決めた際に、その接種後に予想される発熱に対しては、子ども用の熱冷ましの使用が提案されています。また、ワクチンの接種前の解熱鎮痛剤の使用には、免疫の獲得を阻害するおそれがあるとされていますので、注意が必要です。

2021年6月25日
虹クリニック
院長 佐藤 卓